カクヨム
二十(最終回)
冷たい床に寝転がって天井を見上げた。凪がこっそり自宅で愛飲していたパーラメントのヤニがべったりだ。右に視線を移すと、CDラックの、凪のCDが無い分の隙間が目立つ。さらに視線を落とすと、部屋の決まった場所、南窓の下枠右の風溜まりに埃が集まっている。少しだけ舞い上がっては真冬の日差しに透ける。まだ掃除機はない。冷蔵庫も洗濯機もない。それでも2DKは続く。
「勢いないやろ俺?」僕は未だに使い慣れない関西弁で声に出してみてから、ゆっくり起き上がってコインランドリーへ向かう。
店内の片隅では錆びた丸椅子に座った大学生らしきダメージジーンズの青年がポータブルオーディオプレーヤーの絡まったイヤホンコードと格闘している。横目に減価償却済みだろう古びたドラム式乾燥機がぐるぐる回る。洗濯物は反時計回りに遠心力で持ち上げられ重力とともに落ちるを繰り返している。(了)