前書
2004年に姫路文学館で開催された「第3回詩のボクシング兵庫大会」で予選を突破し、見事別日の本大会に進出を決めた。
『詩(し)のボクシングとは、ボクシングのリングに見立てた舞台の上で2人の朗読者が自作の詩などを朗読し、どちらの表現がより観客の心に届いたかを競うイベント』(民明書房より)。違う違う(ウキペディアより)。
本大会当日は大阪の吹田CATVの仕事でハーフマラソンを走り切ってから新幹線で兵庫の姫路に向かうというハードスケジュール。優勝まで見込んで詩(ネタ)を6本用意して臨んだ。
会場に着くなり、「詩ボク」スタッフから「吉田さん、優勝候補ですよ!」と声を掛けられ、調子に乗ったのか、あっけなくトーナメント初戦敗退。1本目の詩は当然、予選で勝ったネタをやるべきだった。若かった・・・。当日の模様はサンテレビや近畿一円のCATVでオンエアされた。
パソコン内のフォルダに当時の詩(ネタ)が残っていた。どこでも披露されていないが、頑張って書いたのだし、ブログで世に出して成仏させようと思いアップする。全6本あるから覚悟しといてね。今回はその1。(2020.6.2)
前説
気象予報士 第四五四一号 吉田ジョージです。お天気詩人という新しいスタイルで詩のボクシングに挑戦します。気象予報士のバイブル、東京大学 小倉義光先生の『一般気象学』を手にがんばります。
ん、ん、ん、失礼、発声練習します。ん、ん、ん。寒冷じぇんしぇんが~、寒冷じぇんしぇんが~。
失礼しました。
万有引力の法則
「天気予報」明日は西の風 のち 北西の風 ともに 一時 強く、くもり 時々 晴れ 夕方 一時 雨か雪 所により カミナリをともなうでしょう。
どないやねん!お前のご機嫌なみや。B型人間!
「理想気体の状態方程式」P=ロウRT、気体の 気圧、温度、密度のうちの二つの値が決まれば、もう一つはおのずと求められるということ。
理想人生の状態方程式は、健康、権力、金。いや、お前の場合は飲む、打つ、買う!
「万有引力の法則」全ての物体は引き合う力を持っている。リンゴが落ちる。地球がリンゴを引っ張っていると同時にリンゴも地球を引っ張っているということ。
俺をふったあの女が 俺に引かれているというのは まぎれも無い事実。サンキュー、ニュートン!
「地球脱出速度」大気内の原子・分子が地球の外気圏へ飛び出すには高さをH、万有引力定数をG、地球の質量をM、地球の半径をRとした時、「ルート R+H分の 2GM」の速度を必要とする。
とりあえず、この小難しい授業の脱出方法を教えてくれません?マリオ助けて~!ポパ~イ!
最後に一編、「明日天気になあれ」。
明日天気になあれ
今、あなたが見上げている 空に浮かぶ雲。
上昇流に乗った空気塊から 常に雲粒(くもつぶ)が生まれている。
今の瞬間も。
今、あなたが見上げている雲は ひと時として同じものではない。
そうして今、あなたが見上げている雲は やがて雨を降らすだろう。
今、あなたが感じている 心地よい風。
プラスかマイナスのぬくもりを運ぶ。
今の瞬間も。
今、あなたが感じている風が南よりの風なら、赤道からのプラスのぬくもり。
そうして今、あなたが感じている風は あなたの髪をなぜるだろう。
今、あなたが浴びている 冬の終わりの太陽。
1.5×10の8乗キロメートル向こうから 七色(なないろ)のエネルギーを届けている。
今の瞬間も。
今、あなたが浴びている太陽がこの星を創った。
そうして今、あなたが見つめている僕は あなたに触れるだろう。
雨モ、風モ、雪モ、夏ノ暑サモ、僕モ、あなたモ、この星の息吹(いぶき)。
「明日天気になあれ」思い切り、靴を蹴り上げればいい。
特別に、「曇り」を出す秘策を教えてあげる。
お気に入りのロングブーツを蹴り上げればいい。
後説
以上です。力を出し切りました。今の僕のバイブルはこれ。楠(くすのき)かつのり先生の『詩のボクシングって何だ!?』どうもありがとうございました。(2004.2.15)
後書
これは予選突破した詩(ネタ)。正直、爆笑と賛辞の嵐だった、よね?
カンペを貼り付けるために本を持ったのだ。最後に『一般気象学』のブックカバーを外すと、『詩のボクシングって何だ!?』が出てくるという大落ち。楠かつのり先生に「最後の要らなかった」と言われたのも良き思い出。(2020.6.2)