稲垣えみ子さん
稲垣えみ子さんにはアフロヘアがトレードマークの一風変わった人というイメージしかなかった。報道ステーションで拝見した時は思わずテレビ画面を写真撮影した程のインパクトがあった。
稲垣えみ子『寂しい生活』
朝日新聞の記者だった著者は東日本大震災の原発事故をきっかけにストイックな節電生活に入る。
掃除機、電子レンジ、エアコン、洗濯機、テレビと次々に家電製品を手放していく。
読者のこちらも、「そんな無茶な」と最初は思う。
そして、遂に冷蔵庫を止める。冷蔵庫があるから我々は必要最小限ではない不要最大限の買い物をしていたのだ。フードロスの問題にも結びつける。
そんな究極の節電生活ははたから見れば滑稽だが、本人は至って真剣なのだ。
幾多の苦難を乗り越え、むしろ人生を楽しく謳歌している稲垣さん。
大量消費社会と対峙することを止めてしまえば案外生きやくなる。これは究極のミニマリズム本だ。
引用。
『簡単に言えば「食の買い捨て文化」を冷蔵庫が作り出したのではないだろうか。大量生産・大量廃棄。これが経済を回してきたのである。』
食に限らず当てはまりそうだ。
終ぞ、その大量消費の原資たる一流企業のサラリーまで捨てる。より自分らしく生きるために。
その辺のいきさつは『魂の退社』という著作に詳しいようだ。
私は家電で時間を得るタイプのミニマリストなので、同じことをしたいとは思わないまでも、読み始めに感じた「そんな無茶な」という感覚は微塵も無くなっていた。むしろ大きな共感を得て読了。(2021.6.5)