吉田ジョージ作 恋愛青春小説『風凪』
おぎすシグレ『読んでほしい』 吉田ジョージ『風凪』 おぎすシグレ『読んでほしい』 読んでほしい (幻冬舎単行本) 作者:おぎすシグレ 幻冬舎 Amazon 2021年7月7日の明日発売だが、Kindleで予約購入した私は前日の7月6日に入手して、一気に読んだ。今日中にブ…
カクヨム 二十(最終回) カクヨム kakuyomu.jp 二十(最終回) 冷たい床に寝転がって天井を見上げた。凪がこっそり自宅で愛飲していたパーラメントのヤニがべったりだ。右に視線を移すと、CDラックの、凪のCDが無い分の隙間が目立つ。さらに視線を落とすと…
カクヨム 十九 カクヨム kakuyomu.jp 十九 その後、全ての、祭りともいえる凪との関係を終えてから知ったのは、出水が当時、凪から僕との交際の諸々を相談され、彼女が僕の女性関係を心配していたこと。マンションの下から見張っていたあの男は凪が僕に付け…
カクヨム BGM 十八 カクヨム kakuyomu.jp BGM *こちらを再生しながらお読みください。 Beck - Loser 十八 十二月下旬、冬本番はもう少し先だが朝晩の寒さは厳しさを増していた。凛とした冷たい空気の中、大阪城天守閣の東に大阪城ホールが鎮座する。ローフ…
カクヨム 十七 カクヨム kakuyomu.jp 十七 凪が買ったばかりのお気に入り洋楽CD。オルタナティブロックというジャンルで括られたベックというアーティストのニューアルバムだ。僕も一聴して気に入ったので出勤前の朝、「ラジオで掛けたいからCD貸して」…
カクヨム 十六 カクヨム kakuyomu.jp 十六 僕は、遂に、きっぱりと、残酷にも、言葉にして、声に出して、凪に伝えてしまった。 「もう無理だ。俺はまだ結婚なんて考えられないし、これまでは凪の作り出す風任せに動いて来ただけだ。俺はもう凪に嫉妬すること…
カクヨム 十五 カクヨム kakuyomu.jp 十五 「実家に帰ってたやんか。私昼寝しててん。ふと目が覚めたら私の股間にお父さんの顔があってん」 「はっ、どういうこと?」 「私が起き上がるとすぐに部屋を出て行ったんやけど、そういえば高校時代も、意味もなく…
カクヨム 十四 カクヨム kakuyomu.jp 十四 「私、生みの親の顔さえ知らんけど、凪って名前はその生みの親が付けてくれたみたい。お母さんが、あっ、育ての方のやで、教えてくれた。名付けた意味も教えて貰って、凪という言葉自体は波風が止むっていう意味や…
カクヨム 十三 カクヨム kakuyomu.jp 十三 僕はその日、自らに堆積した薄い皮膜を一枚でも多く引き剥がしたい一心で、心の中に孤独を湛えた美人A子と口と口で粘膜の交換をし合っていた。濃紺のコートに包まれたモンドリアンルックのワンピース、その赤いエ…
カクヨム 十二 カクヨム kakuyomu.jp 十二 *2020年4月20日(月)、タイトルを『風凪ぐ(かぜなぐ)』から『風凪(かざなぎ)』に変更。 二人で過ごす初めての十一月。空気の乾燥し始めた下旬、互いに仕事が休みで何をするともなく2DKのリビングルームといえる…
カクヨム 十一 カクヨム kakuyomu.jp 十一 県域AMラジオ局の初回生放送本番。何だろう、緊張していないつもりなのに、マイクを前にしてイヤホンを耳に入れると、マイクテストの段階で自身の声が震えているのがわかった。緊張していないのではなく、緊張す…
カクヨム 十 カクヨム kakuyomu.jp 十 落葉樹がいつ頃色付くかとテレビで話題に上がり始める十一月上旬。僕はサボりがちだったアナウンサー学校に出席していた。凪はとっくに辞めていて、様々なイベントで司会を務めていた。 「次は上村君」植田先生に突然、…
カクヨム 九 カクヨム kakuyomu.jp 九 その日、凪からは日出の奢りで、磯島や元山らと飲みに行くと聞いていた。僕が酒を飲みに行く時は根掘り葉掘り、誰とどこに行き何時に帰るのかを追求する凪だが、自身の外出に関しては概要のみの報告しかない。そして、…
カクヨム 八 カクヨム kakuyomu.jp 八 凪が僕の部屋に転がり込んで三か月目の十月、日の入りの早さが秋の訪れを確認させる夕方。次の展示会の打ち合せから帰る凪を最寄駅の一つ先の駅で待った。その駅は京都線と千里線の分岐点だったので、梅田から電車を選…
カクヨム 七 カクヨム kakuyomu.jp 七 まだ残暑の厳しい九月。僕は、楽し過ぎる凪との共同生活ゆえの友人らとの疎遠を凪に嘆いていた。凪は女友達との付き合いも僕との同棲生活も実家とのやり取りも器用にこなしているように見えたからだ。 「ミッキー、友達…
カクヨム 六 カクヨム kakuyomu.jp 六 僕と凪がまだ出会っていない同じ年の三月。気象台からタンポポの開花がひっそりと発表された下旬に、僕は師匠と出水と梅田のクラブにいた。クラブとは大音量で音楽が流れ、若い男女が踊る方のクラブであって、女性が隣…
カクヨム 五 カクヨム kakuyomu.jp 五 「では、告白カードにカップルになりたい異性の番号を第一希望から第三希望までお書きいただきます。絶対に第三希望まで書かなければならないわけではありません。第一希望だけでも、第二希望まででも結構です。お気に…
カクヨム 四 カクヨム kakuyomu.jp 四 凪が僕の部屋に住み着いて六日目にさらっと言った。 「私の両親は私の実の親ではないねん。私は養女として貰われて行ったけど、私には実の両親の記憶なんて何にもないねん」 全ての展開が光の速さに思えた。まだ出会っ…
カクヨム 三 カクヨム kakuyomu.jp 三 凪と出会ってからちょうど四週目の授業後、僕は凪に提案した。 「俺の友達に出水って奴がいて、物凄く男前なんで、藤本さんさえ良かったら紹介したいんだけど」 「ミッキー、ほんまに!会いたい、会いたい。いつにする…
カクヨム 二 カクヨム kakuyomu.jp 二 「今日から皆さんといっしょにレッスンを受ける藤本凪です。よろしくお願いします」 その見目麗しい女性は人懐っこい笑顔と、字面こそ標準語だが、関西弁のイントネーションで簡単な自己紹介をした。 僕が凪に出会った…
カクヨム 一 カクヨム 小説『風凪(かざなぎ)』を公開したい。当ブログと「カクヨム」というサイトに上げるので読んでみて欲しい。原稿用紙80枚くらいでもう一昨年(2017年)に完成はしているのであとは上げるだけだ。 kakuyomu.jp 一 風凪 吉田ジョージ 「はい…